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「香を焚く」

今回は仏事にある身近な香を焚く事についてお話させて頂きます。

九十歳を過ぎられた老人と茶を喫したらの団欒の一刻を過ごしていると、老人は「私は九十二年も生きてきたけれど、あまりにも身近な事ごと、日常的なことで解らないこと、知らない事が多すぎる。この先どれくらい生かせて頂くか知らないけれど、一つでも自分で納得して生きたいものだ。しかし、今まであまりにもあたり前の事で、聞くにも辱しい事で聞くにも聞けなかった。このまま知らずに生涯を終わる事も悔しいし、情けないので今日は色々と教えて欲しい。」と真剣な眼差しで話されます。

そこで最初に話された事が、「何故、香を焚くのか?何故、線香を焚くのか?」、と申されます。私共も、もう一度考えてみたい事ではなかろうかと考え、身近な事乍ら焼香の意味を、意義を考えてみたいものです。

「香を焚く」という事は、身体を清浄にする、心の邪念を打ち払う、体臭を消す、仏に対して浄化された自己の身体と心になる事です。つまり、生まれたままの心と身体にたちかえるという事です。人の悲しみが自分の悲しみとして受け取れ、人の喜びも自分喜びとして受け取れ、自他を乗り越えた世界に自分が目覚め生きるという事になります。

香を焚く事は、釈尊がこの世においでになった頃から二千五百年も続けられてきた事です。仏前を美しく清らかにお飾りさせて頂き、心を捧げるという事です。ですから、香はなるべく品質の良いものを使用したいものです。線香は香を焚いている間、より一層長くする為に工夫されたもので、使いやすい事もあって最も普及しております。

尚、よく聞かれる事で、「焼香は一回でするものなのか?また、三回でするものなのか?」という事ですが、仏前での焼香は心をこめて行う事ですから一回で良いのです。又、心を静めるのに一回、身を清めるのに一回と、二回行ってもかまいません。また、仏法僧への帰依を意味して三回行っても良いわけです。

余談になりますが、先程、香を焚く事で身体をきれいにする事とも述べましたが、仏教発祥の地などは暑い国ですから、汗などの体臭を消し、身も心もきれいにな状態にしたところで、はじめて仏前に向かうという事も考えられています。

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